Archimedes' Constant

2026/10/06 14:05
2026/10/06 14:12
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What is "π\pi" ?

π\pi は円周の長さと直径の比として定まる定数で,円周率(pi)やアルキメデスの定数(Archimedes' constant)とも呼ばれる.値は次の通りである.

π=3.14159 26535 89793 23846…\pi = 3.14159\,26535\,89793\,23846\ldots

π\pi は無理数であり,さらに超越数でもある.無理数であることは 1761 年にランベルトが,超越数であることは 1882 年にリンデマンが示した.超越数であることから,定規とコンパスだけで円と同じ面積の正方形を作る「円積問題」は解けないことが分かる.

半径 rr の円の周の長さは 2πr2\pi r,面積は πr2\pi r^2 である.また,角度を弧の長さで測る弧度法では半円の中心角が π\pi になり,三角関数の微分が次のように簡単な形になる.

ddxsin⁡x=cos⁡x,ddxcos⁡x=−sin⁡x\frac{d}{dx}\sin x = \cos x, \qquad \frac{d}{dx}\cos x = -\sin x

このため π\pi は幾何だけでなく,解析,確率・統計(正規分布),物理(波や振動)など多くの分野に現れる.

なお,本記事では角度はすべて弧度法で表す.

Origin of the Name

  • 記号 π\pi:ウェールズの数学者ウィリアム・ジョーンズ(William Jones)が,1706 年の著書 Synopsis Palmariorum Matheseos で円周と直径の比を表す記号として初めて使った.ギリシャ語の περιφέρεια(周)や περίμετρος(周囲の長さ)の頭文字に由来すると考えられている
  • 普及:オイラーが 1730 年代からこの記号を使い,1748 年の『無限解析入門』でも用いたことで広まった
  • アルキメデスの定数:正多角形を使って π\pi を初めて理論的に評価したアルキメデスにちなむ

Definitions

π\pi にはいくつかの定義の仕方があり,どれも同じ数を定める.代表的なものは次の 5 つである.

Geometric Definition

円周の長さを LL,直径を dd として,次のように定める.

π=Ld\pi = \frac{L}{d}

Area Definition

単位円(半径 1 の円)の面積を SS として,次のように定める.

π=S\pi = S

Integral Definition

π=4∫0111+x2 dx\pi = 4\int_0^1 \frac{1}{1+x^2}\,dx

Series Definition

π=4∑k=0∞(−1)k2k+1=4(1−13+15−17+⋯ )\begin{aligned} \pi &= 4\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{2k+1} \\ &= 4\left(1 - \frac{1}{3} + \frac{1}{5} - \frac{1}{7} + \cdots\right) \end{aligned}

Differential Equation Definition

初期値問題 y′′=−y, y(0)=1, y′(0)=0y'' = -y,\ y(0) = 1,\ y'(0) = 0 の解 y(x)y(x) の最小の正の零点を x0x_0 として,次のように定める.

π=2x0\pi = 2x_0

Derivations

ここでは Geometric Definition を出発点とし,残りの 4 つの定義がすべて同じ数を定めることを示す.流れは次の通りである.

  1. 円周の長さを正多角形の周で挟んで評価する(Archimedes' Method)
  2. 正多角形の周が実際に収束し,円周と直径の比が円の大きさによらないことを示す(Existence of the Circumference)
  3. 残りの定義との一致を 1 つずつ示す(Area Form,Integral Form,Series Form,Differential Equation Form)

各節がどの結果を使うかは次の通りである.

節 使う結果
Existence of the Circumference 三角不等式,有界な単調数列は収束する
Area Form Existence of the Circumference
Integral Form 弧長の積分公式,置換積分
Series Form Integral Form
Differential Equation Form Integral Form,逆関数の微分

前提:曲線の長さと図形の面積について,次が成り立つものとする.

  • 曲線の長さは,その曲線に内接する折れ線の長さの極限として定める.円周については次節で具体的に構成する
  • 滑らかな曲線 y=f(x) (a≤x≤b)y = f(x)\ (a \leq x \leq b) の長さは,上の定義と一致して ∫ab1+f′(x)2 dx\int_a^b \sqrt{1 + f'(x)^2}\,dx で与えられる(端点で f′f' が発散する場合は広義積分とする)
  • 合同な図形の長さ・面積は等しい.図形を rr 倍に拡大すると,長さは rr 倍になる
  • 図形 AA が図形 BB に含まれるなら,AA の面積は BB の面積以下である

Archimedes' Method

π=Ld\pi = \frac{L}{d} の LL は曲線の長さなので,直接計算するのは難しい.そこでアルキメデスは,円に内接・外接する正多角形の周で円周を挟んで π\pi を評価した.

単位円に内接する正 nn 角形の周を pnp_n,外接する正 nn 角形の周を PnP_n とする.円周の長さは 2π2\pi で,内接多角形の周より長く,外接多角形の周より短いと考えられるので,

pn2<π<Pn2\frac{p_n}{2} < \pi < \frac{P_n}{2}

となるはずである.正六角形から始めて辺の数を 2 倍ずつにしていくと,値は次のようになる.

nn pn/2p_n/2 Pn/2P_n/2
6 3 3.46410…
12 3.10582… 3.21539…
24 3.13262… 3.15965…
48 3.13935… 3.14608…
96 3.14103… 3.14271…

下の図の左は単位円に内接・外接する正六角形と正十二角形,右は表の値を nn を対数軸にとってプロットしたものである.辺の数を増やすと,内接多角形(青)と外接多角形(オレンジ)の周が上下から π\pi に近づいていく.

01_archimedes.png

アルキメデスは正 96 角形まで計算し,22371<π<227\frac{223}{71} < \pi < \frac{22}{7}(3.1408…<π<3.1428…3.1408\ldots < \pi < 3.1428\ldots)を得た.辺の数を増やすほど上下の値が近づいていき,その共通の極限が π\pi である.

Existence of the Circumference

表を見ると pn2\frac{p_n}{2} と Pn2\frac{P_n}{2} は同じ値に近づきそうだが,数値を眺めるだけでは本当に収束するかは分からない.また,π=Ld\pi = \frac{L}{d} が円の大きさによらないことも確かめる必要がある.そこで,円周の長さを正多角形の周の極限として定め,これがうまく定まることを示す.

以下,nn は 6,12,24,…6, 12, 24, \ldots を動くものとし,nn の次の項を 2n2n と書く.

命題:数列 {pn}\{p_n\} は狭義単調増加,{Pn}\{P_n\} は狭義単調減少であり,pn<Pnp_n < P_n かつ Pn−pn→0P_n - p_n \to 0 である.したがって,pnp_n と PnP_n は同じ値に収束する.

方針:単調性は三角不等式から示す.差が 0 に近づくことは,外接正 nn 角形が内接正 nn 角形を拡大したものであることから示す.

証明:

ステップ 1(pnp_n の単調増加):内接正 nn 角形の隣り合う頂点を A,BA, B とし,弧 ABAB の中点を MM とする.このように各辺の間に中点を加えたものが内接正 2n2n 角形である.三角不等式より

AB<AM+MBAB < AM + MB

なので,各辺を 2 本の辺に置き換えると周は長くなる.よって pn<p2np_n < p_{2n} である.

ステップ 2(PnP_n の単調減少):外接正 nn 角形の頂点 VV の両隣の接点を A,BA, B とし,弧 ABAB の中点 MM での接線が辺 VA,VBVA, VB と交わる点を Q,RQ, R とする.外接正 2n2n 角形は,外接正 nn 角形の各頂点 VV を切り落として辺 QRQR で置き換えたものである.三角不等式より

QR<QV+VRQR < QV + VR

なので,P2n<PnP_{2n} < P_n である.

ステップ 3(pn<Pnp_n < P_n と差の評価):内接正 nn 角形の中心から辺までの距離を hnh_n とすると 0<hn<10 < h_n < 1 である.外接正 nn 角形は中心から辺までの距離が 1 の正 nn 角形なので,内接正 nn 角形を(回転したうえで)中心から 1hn\frac{1}{h_n} 倍に拡大したものと合同である.前提より長さも 1hn\frac{1}{h_n} 倍になるので

Pn=pnhn>pnP_n = \frac{p_n}{h_n} > p_n

である.これとステップ 1,2 より p6≤pn<Pn≤P6p_6 \leq p_n < P_n \leq P_6 なので,{pn}\{p_n\} は上に有界な単調増加数列,{Pn}\{P_n\} は下に有界な単調減少数列であり,どちらも収束する.

差については

Pn−pn=pn(1hn−1)≤P6⋅1−hnhn\begin{aligned} P_n - p_n &= p_n\left(\frac{1}{h_n} - 1\right) \\ &\leq P_6 \cdot \frac{1 - h_n}{h_n} \end{aligned}

となる.内接正 nn 角形の一辺の長さを sns_n とすると,三平方の定理より

hn=1−sn24h_n = \sqrt{1 - \frac{s_n^2}{4}}

である.sn=pnn<P6n→0s_n = \frac{p_n}{n} < \frac{P_6}{n} \to 0 なので hn→1h_n \to 1 となり,Pn−pn→0P_n - p_n \to 0 が分かる.

以上より,pnp_n と PnP_n は同じ値に収束する.■\blacksquare

この極限を単位円の周の長さ L1L_1 と定める.半径 rr の円では,内接・外接多角形がすべて rr 倍になるので周の長さは rL1rL_1 になり,

Ld=rL12r=L12\frac{L}{d} = \frac{rL_1}{2r} = \frac{L_1}{2}

は rr によらない.これが π\pi であり,L1=2πL_1 = 2\pi である.また,pnp_n は狭義単調増加,PnP_n は狭義単調減少なので,すべての nn で pn2<π<Pn2\frac{p_n}{2} < \pi < \frac{P_n}{2} が成り立つ.特に p6=6p_6 = 6,P6=43P_6 = 4\sqrt{3} から 3<π<233 < \pi < 2\sqrt{3} が分かる.

Area Form

命題:単位円の面積 SS は π\pi に等しい.

方針:円を内接・外接する正 nn 角形で挟み,多角形の面積を周の長さで表してから,はさみうちの原理を使う.

下の図の左は,内接・外接する正十二角形を中心から nn 個の三角形に分けたもので,青が内接側(底辺 ss,高さ hh),オレンジが外接側(高さ 1)の三角形 1 つを表す.右は,証明で使う 2 つの面積 12pnhn\frac{1}{2}p_n h_n と 12Pn\frac{1}{2}P_n が上下から π\pi に近づく様子である.

02_area.png

証明:内接正 nn 角形は,中心と各辺を結ぶと nn 個の合同な二等辺三角形に分けられる.各三角形は底辺 sns_n,高さ hnh_n なので,内接正 nn 角形の面積は

n⋅12snhn=12pnhnn \cdot \frac{1}{2}s_n h_n = \frac{1}{2}p_n h_n

である.外接正 nn 角形も同じように分けると,各三角形の高さは中心から接点までの距離 1 なので,面積は 12Pn\frac{1}{2}P_n である.

内接正 nn 角形は円に含まれ,円は外接正 nn 角形に含まれるので,前提より

12pnhn≤S≤12Pn\frac{1}{2}p_n h_n \leq S \leq \frac{1}{2}P_n

となる.Existence of the Circumference より n→∞n \to \infty で pn→2πp_n \to 2\pi,Pn→2πP_n \to 2\pi,hn→1h_n \to 1 なので,両端はどちらも π\pi に収束する.SS は nn によらないので,はさみうちの原理より S=πS = \pi である.■\blacksquare

半径 rr の円は単位円を rr 倍に拡大したもので,内接・外接多角形の面積はすべて r2r^2 倍になるので,同じ議論から面積は πr2\pi r^2 になる.

Integral Form

11+x2\frac{1}{1+x^2} は一見すると円とは関係なさそうに見える.しかし,円弧の長さを積分で書いてから変数を置き換えると,この形が現れる.

命題:

π=4∫0111+x2 dx\pi = 4\int_0^1 \frac{1}{1+x^2}\,dx

方針:単位円の上半分 y=1−u2y = \sqrt{1-u^2} の弧長を積分で書き,置換 x=u1−u2x = \frac{u}{\sqrt{1-u^2}} で被積分関数を 11+x2\frac{1}{1+x^2} に変える.弧の長さそのものは円の対称性から求める.

下の図の左の塗りつぶした部分の面積が ∫01dx1+x2\int_0^1 \frac{dx}{1+x^2} である.置換をすると,この積分は右の図の赤い弧(点 (0,1)(0,1) から点 (12,12)\left(\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right) まで)の長さに変わる.この弧は円周を 8 等分したうちの 1 つである.

03_integral.png

証明:

ステップ 1(弧長の積分表示):f(u)=1−u2f(u) = \sqrt{1-u^2} とおくと,−1<u<1-1 < u < 1 で

f′(u)=−u1−u2f'(u) = -\frac{u}{\sqrt{1-u^2}}

であり,

1+f′(u)2=1+u21−u2=11−u2\begin{aligned} 1 + f'(u)^2 &= 1 + \frac{u^2}{1-u^2} \\ &= \frac{1}{1-u^2} \end{aligned}

となる.よって前提の弧長の公式より,点 (0,1)(0, 1) から点 (a,1−a2)\left(a, \sqrt{1-a^2}\right) までの弧の長さ(0≤a<10 \leq a < 1)は

ℓ(a)=∫0adu1−u2\ell(a) = \int_0^a \frac{du}{\sqrt{1-u^2}}

である.

ステップ 2(a=12a = \frac{1}{\sqrt{2}} の弧の長さ):xx 軸,yy 軸,直線 y=xy = x,直線 y=−xy = -x によって,円周は 8 つの弧に分かれる.これらの弧は,この 4 本の直線に関する折り返しを繰り返すことで互いに重なるので,前提よりすべて同じ長さである.円周の長さは 2π2\pi なので,1 つの弧の長さは π4\frac{\pi}{4} である.点 (0,1)(0,1) から点 (12,12)\left(\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right) までの弧はこのうちの 1 つなので

ℓ(12)=π4\ell\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right) = \frac{\pi}{4}

である.

ステップ 3(置換):0≤u≤120 \leq u \leq \frac{1}{\sqrt{2}} に対して x=u1−u2x = \frac{u}{\sqrt{1-u^2}} とおく.これは単調増加で,u=0u = 0 のとき x=0x = 0,u=12u = \frac{1}{\sqrt{2}} のとき x=1x = 1 である.微分すると

dxdu=11−u2+u2(1−u2)3/2=(1−u2)+u2(1−u2)3/2=1(1−u2)3/2\begin{aligned} \frac{dx}{du} &= \frac{1}{\sqrt{1-u^2}} + \frac{u^2}{(1-u^2)^{3/2}} \\ &= \frac{(1-u^2) + u^2}{(1-u^2)^{3/2}} \\ &= \frac{1}{(1-u^2)^{3/2}} \end{aligned}

となる.また

1+x2=1+u21−u2=11−u21 + x^2 = 1 + \frac{u^2}{1-u^2} = \frac{1}{1-u^2}

である.よって置換積分より

∫01dx1+x2=∫01/2(1−u2)⋅1(1−u2)3/2 du=∫01/2du1−u2=ℓ(12)=π4\begin{aligned} \int_0^1 \frac{dx}{1+x^2} &= \int_0^{1/\sqrt{2}} (1-u^2) \cdot \frac{1}{(1-u^2)^{3/2}}\,du \\ &= \int_0^{1/\sqrt{2}} \frac{du}{\sqrt{1-u^2}} \\ &= \ell\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right) \\ &= \frac{\pi}{4} \end{aligned}

となる.両辺を 4 倍して,命題が示された.■\blacksquare

三角関数を使えば,この置換は x=tan⁡θx = \tan\theta(u=sin⁡θu = \sin\theta)とおくことに相当する.ここでは三角関数を使わずに,円の対称性だけで示した.

Series Form

Integral Form の被積分関数 11+x2\frac{1}{1+x^2} は,等比級数 1−x2+x4−⋯1 - x^2 + x^4 - \cdots の和の形をしている.これを項ごとに積分すると Series Definition の式が出てくる.ただし無限個の項を項別に積分してよいかは自明ではないので,有限個の項と余りに分けて扱う.

命題:

π=4∑k=0∞(−1)k2k+1\pi = 4\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{2k+1}

方針:11+x2\frac{1}{1+x^2} を n+1n+1 項の等比数列の和と余りに分けて [0,1][0, 1] で積分し,余りの積分が 0 に近づくことを示す.

証明:等比数列の和の公式に公比 −x2-x^2 を代入すると

∑k=0n(−x2)k=1−(−x2)n+11+x2\sum_{k=0}^{n}(-x^2)^k = \frac{1 - (-x^2)^{n+1}}{1+x^2}

なので,

11+x2=∑k=0n(−1)kx2k+(−1)n+1x2n+21+x2\frac{1}{1+x^2} = \sum_{k=0}^{n}(-1)^k x^{2k} + \frac{(-1)^{n+1}x^{2n+2}}{1+x^2}

である.両辺を 00 から 11 まで積分すると,∫01x2k dx=12k+1\int_0^1 x^{2k}\,dx = \frac{1}{2k+1} より

∫01dx1+x2=∑k=0n(−1)k2k+1+Rn\int_0^1 \frac{dx}{1+x^2} = \sum_{k=0}^{n}\frac{(-1)^k}{2k+1} + R_n

となる.ここで余り RnR_n は

Rn=(−1)n+1∫01x2n+21+x2 dxR_n = (-1)^{n+1}\int_0^1 \frac{x^{2n+2}}{1+x^2}\,dx

であり,0≤x≤10 \leq x \leq 1 で 1+x2≥11 + x^2 \geq 1 なので

∣Rn∣≤∫01x2n+2 dx=12n+3|R_n| \leq \int_0^1 x^{2n+2}\,dx = \frac{1}{2n+3}

と評価できる.n→∞n \to \infty で Rn→0R_n \to 0 なので,Integral Form より

π4=∫01dx1+x2=∑k=0∞(−1)k2k+1\frac{\pi}{4} = \int_0^1 \frac{dx}{1+x^2} = \sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{2k+1}

となる.両辺を 4 倍して,命題が示された.■\blacksquare

部分和を Sn=4∑k=0n(−1)k2k+1S_n = 4\sum_{k=0}^{n}\frac{(-1)^k}{2k+1} とおくと,証明の評価から ∣π−Sn∣≤42n+3|\pi - S_n| \leq \frac{4}{2n+3} である.下の図の左は SnS_n をプロットしたもので,π\pi の上下を交互に行き来しながら近づく.右は誤差 ∣π−Sn∣|\pi - S_n| と上の評価(bound)を両対数軸で比べたものである.

04_leibniz.png

誤差はおよそ 1n\frac{1}{n} でしか減らないので,誤差を 10−510^{-5} 程度にするにも約 10 万項が必要になる.実際に π\pi を計算するときは,マチンの公式など収束の速い式が使われる.

Differential Equation Form

単位円上を点 (1,0)(1, 0) から反時計回りに速さ 1 で進む点を考えると,その xx 座標は「2 回微分すると符号が反転する」という性質をもつ.これが Differential Equation Definition の y′′=−yy'' = -y である.これを正確に示す.

命題:初期値問題

y′′=−y,y(0)=1,y′(0)=0y'' = -y, \qquad y(0) = 1, \qquad y'(0) = 0

の解 y(x)y(x) の最小の正の零点は π2\frac{\pi}{2} である.

方針:単位円上の点を弧の長さ θ\theta で表し,その xx 座標 c(θ)c(\theta) がこの初期値問題の解であることを,Integral Form のステップ 1 の弧長の式から示す.次に解が 1 つしかないことを示し,c(θ)c(\theta) の零点を円の対称性から求める.

0≤θ≤π0 \leq \theta \leq \pi に対して,点 (1,0)(1, 0) から上半円に沿って反時計回りに長さ θ\theta だけ進んだ点を (c(θ),s(θ))(c(\theta), s(\theta)) とする.上半円の長さは π\pi なので,θ=π\theta = \pi で点 (−1,0)(-1, 0) に着く.下の図の左がこの点を表し,右が初期値問題の解のグラフで,最初に 0 になる点が π2\frac{\pi}{2} である.

05_ode.png

証明:

ステップ 1(c,sc, s の導関数):−1<x<1-1 < x < 1 に対して,点 (x,1−x2)\left(x, \sqrt{1-x^2}\right) から点 (1,0)(1, 0) までの弧の長さは,Integral Form のステップ 1 と同様に

θ(x)=∫x1dt1−t2\theta(x) = \int_x^1 \frac{dt}{\sqrt{1-t^2}}

である(t=1t = 1 で被積分関数は発散するが,広義積分として収束する).微分積分学の基本定理より

θ′(x)=−11−x2<0\theta'(x) = -\frac{1}{\sqrt{1-x^2}} < 0

なので,θ(x)\theta(x) は (−1,1)(-1, 1) から (0,π)(0, \pi) への狭義単調減少な全単射であり,その逆関数が c(θ)c(\theta) である.逆関数の微分より,0<θ<π0 < \theta < \pi で

c′(θ)=1θ′(x)=−1−c(θ)2=−s(θ)\begin{aligned} c'(\theta) &= \frac{1}{\theta'(x)} \\ &= -\sqrt{1 - c(\theta)^2} \\ &= -s(\theta) \end{aligned}

となる.さらに s(θ)=1−c(θ)2s(\theta) = \sqrt{1 - c(\theta)^2} を微分すると

s′(θ)=−c(θ) c′(θ)1−c(θ)2=−c(θ)⋅(−s(θ))s(θ)=c(θ)\begin{aligned} s'(\theta) &= \frac{-c(\theta)\,c'(\theta)}{\sqrt{1 - c(\theta)^2}} \\ &= \frac{-c(\theta) \cdot (-s(\theta))}{s(\theta)} \\ &= c(\theta) \end{aligned}

である.

ステップ 2(θ=0\theta = 0 を含む区間への拡張):−π<θ<0-\pi < \theta < 0 では下半円の点を考え,c(θ)=c(−θ)c(\theta) = c(-\theta),s(θ)=−s(−θ)s(\theta) = -s(-\theta) と定める(xx 軸に関する折り返し).すると (−π,0)(-\pi, 0) でも

c′(θ)=−c′(−θ)=s(−θ)=−s(θ)c'(\theta) = -c'(-\theta) = s(-\theta) = -s(\theta) s′(θ)=s′(−θ)=c(−θ)=c(θ)s'(\theta) = s'(-\theta) = c(-\theta) = c(\theta)

が成り立つ.θ=0\theta = 0 では c(0)=1c(0) = 1,s(0)=0s(0) = 0 で c,sc, s は連続であり,θ→0\theta \to 0 のとき c′(θ)=−s(θ)→0c'(\theta) = -s(\theta) \to 0,s′(θ)=c(θ)→1s'(\theta) = c(\theta) \to 1 である.「連続関数の導関数が θ→0\theta \to 0 で極限をもてば,θ=0\theta = 0 でも微分可能で微分係数はその極限に等しい」(平均値の定理から従う)ので,

c′(0)=0=−s(0),s′(0)=1=c(0)c'(0) = 0 = -s(0), \qquad s'(0) = 1 = c(0)

となる.以上より (−π,π)(-\pi, \pi) 全体で c′=−sc' = -s,s′=cs' = c が成り立ち,

c′′(θ)=−s′(θ)=−c(θ),c(0)=1,c′(0)=0c''(\theta) = -s'(\theta) = -c(\theta), \qquad c(0) = 1, \qquad c'(0) = 0

である.つまり cc は初期値問題の解である.

ステップ 3(解の一意性):y1,y2y_1, y_2 を 00 を含む区間で定義された初期値問題の解とし,w=y1−y2w = y_1 - y_2 とおく.w′′=−ww'' = -w,w(0)=w′(0)=0w(0) = w'(0) = 0 である.E(x)=w(x)2+w′(x)2E(x) = w(x)^2 + w'(x)^2 とおくと

E′(x)=2ww′+2w′w′′=2ww′−2w′w=0\begin{aligned} E'(x) &= 2w w' + 2w' w'' \\ &= 2w w' - 2w' w \\ &= 0 \end{aligned}

なので EE は定数であり,E(x)=E(0)=0E(x) = E(0) = 0 となる.よって w≡0w \equiv 0,すなわち y1=y2y_1 = y_2 である.したがって,初期値問題の解 yy は (−π,π)(-\pi, \pi) で cc と一致する.

ステップ 4(零点):0<θ<π0 < \theta < \pi で c′(θ)=−s(θ)<0c'(\theta) = -s(\theta) < 0 なので,cc は [0,π)[0, \pi) で狭義単調減少である.c(θ)=0c(\theta) = 0 となるのは点が (0,1)(0, 1) にあるときで,上半円は yy 軸に関する折り返しで 2 つの同じ長さの弧に分かれるので,そのときの θ\theta は上半円の長さ π\pi の半分の π2\frac{\pi}{2} である.よって 0≤θ<π20 \leq \theta < \frac{\pi}{2} で c(θ)>0c(\theta) > 0,c(π2)=0c\left(\frac{\pi}{2}\right) = 0 となり,最小の正の零点は π2\frac{\pi}{2} である.

以上より,命題が示された.■\blacksquare

ここで定めた c(θ)c(\theta),s(θ)s(\theta) は cos⁡θ\cos\theta,sin⁡θ\sin\theta そのものである.つまりこの証明は,三角関数を単位円上の点として定義したときに (cos⁡θ)′=−sin⁡θ(\cos\theta)' = -\sin\theta,(sin⁡θ)′=cos⁡θ(\sin\theta)' = \cos\theta となることの証明にもなっている.


最後に

忘れてたことをリストにしておこう!

  • 広義積分
  • 狭義単調減少
  • 全単射